先生と生徒 [この一枚]
ショルンスハイムのピアノソナタ全集。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1481331
ハイドンのピアノソナタを時代に応じてクラヴィコード、ハープシコード、フォルテピアノなどを弾き分けて録音したもの。2003〜2004年の録音。
初期のもはハープシコードやクラヴィコードで淡々と弾いていき、後期のものはフォルテピアノに。時代とともに響きが変わり、響きと強弱が豊かになっていきます。楽器の変遷を追って多彩な響きが楽しめます。
この全集の聞き所は、2曲はいっている連弾用ソナタで、特にXVIIa:1「先生と生徒」が秀逸。連弾はおそらくショルンスハイムより格上だと思いますがシュタイアーが担当。本来なら、シュタイアーの全集の連弾にショルンスハイムが登場するところでしょう。不思議な企画です。(シュタイアーは別に選集がDeutsche Harmonia Mundiからでています)
おそらくシュタイアーがリードしているんでしょう、他の曲の録音とは次元の違う自由闊達な演奏で、なぜか携帯電話の着信音や声の効果音が入るサービス満点な演出。
このアルバム自体が先生と生徒の合作のような趣です(笑)
あと、意外と良かったのが、皇帝の2楽章の変奏曲。フォルテピアノの弦のびり付きまでリアルにとらえた録音と叙情的な表現が決まってます。
前半のクラヴィコード、ハープシコードでの演奏はハイドンの曲の楽しさを表現しきれていないもどかしさがつきまとうものの、後期のソナタでは明らかに奏法を変え、表現の幅が広がっています。
全集としては作りもしっかり、ライナーノーツも緻密なつくりですが、様々な全集がでている中、ファーストチョイスにはおすすめしにくいです。ピアノソナタを聞き込んだベテラン向けのセットという位置づけでしょう。
絶品! リステンパルトのホルン信号 [この一枚]
今日は古いコレクションからお気に入りの一枚。
カール・リステンパルトの交響曲集。ホルン信号、マリア・テレジア、王妃の3曲のセットで1960年代の録音です。
これは文句なしの名盤です。
一言でいうとごく普通の演奏なんですが、まろやかなオケの音色、中庸なテンポ、すべての奏者の息がぴたりと合って大きな音楽を奏でていて、これ以上の演奏はないというような完成度。ホルン信号とマリア・テレジアのアダージョ楽章の美しさはほれぼれするほど。古い録音ですが古風な感じはあまりせず、時を超えた演奏の価値を感じさせます。録音もこの時期としては非常によく、聴きやすい音です。
ハイドンの演奏でいえばビーチャムの交響曲の演奏の方向に近いかもしれませんが、ビーチャムにはイギリス風、リステンパルトにはフランス風を感じるというのが違いでしょうか。
これほどの演奏をするリステンパルトがもっと取り上げられてもいい気がしますが、日本では古い方以外はほとんど知られていないんじゃないかと思います。シューリヒトなんかが好きな方には受けるような気がします。
リステンパルトの録音で今手に入るものは多くありませんが、ユニバーサルから最近旧ACCORDのコレクションが黄色いジャケットのシリーズでリリースされた中に、同じハイドンの時計、軍隊、驚愕のセット、モーツァルトのピアノ協奏曲22、23番や、ミサ曲集(エクスラーテ・ユビラーテ、戴冠ミサ、ヴェスペレ ハ長調)などがあり、リステンパルトの魅力を知るにはこちらもいいアルバムです。
今見たら、HMV ONLINEの検索に引っかかりませんが、もしかして廃盤かしら、、、
ホロヴィッツ最後の録音 [この一枚]
今日の一枚は未聴コレクションの発掘ものです。
私が持っているのは上の盤なんですが、なぜか、HMV ONLINEにないので同じハイドンのソナタの録音が入った盤もついでに。
ホロヴィッツが亡くなったのが1989年の11月5日だそうで、この盤に含まれたハイドンのソナタ(XVI:49)の録音したのがその前の10月20日から11月1日ということで、本当にラストレコーディングです。
上の盤には1960年代に録音したハイドンのソナタ2曲(XVI:23、XVI:48)とクレメンティのソナタなどが含まれていますが、下の盤にはXVI:49の他にショパン、リスト、ワーグナーの曲のセット。きっとこちらがちゃんとした盤なんでしょう。
上の盤を手に入れてからかなりたちますが、あまりちゃんと聴いていませんでした。
未聴盤を整理していて、おっとこれはきっと最晩年の録音では、、、ときずき、あわててライナーノーツやネットを確認。確かにラストレコーディングでした。
XVI:49は好きな曲ですが、これは格別。60年代の2曲は指がよく動くデモンストレーションのようないわゆるホロヴィッツ節で、ハイドンのソナタの演奏としてはあまりお勧めできないものです。ところがそれから20年以上たったXVI:49の録音は、無我の境地とでもいったら良いのでしょうか、澄み切った無欲のような演奏。指がもつれるような部分はほとんどありません。この一曲だけでこのアルバムは買いでしょう。
この直後の5日の食事中に急逝というのが信じられません。豪腕で鳴らした86歳の巨匠の白鳥の歌の一曲がハイドンのソナタだったのはどのような意図だったのでしょうか。この一曲でホロヴィッツというピアニストに対する印象が大きく変わりました。
濃密な軽妙 [この一枚]
Hans Leygrafのピアノソナタ集 [この一枚]
最近手に入れたもの。1960年に録音された初期、中期のソナタと2007年に録音された後期のソナタの2枚組です。
鍵盤を一つ一つ確かめるように、音をおいていくような演奏。1枚目の1960年の演奏は40歳の頃の演奏ということになりますが、既に枯れてます。この年齢でこの達観ぶりはどうなんでしょう。とくにピアニッシモの部分のつぶやくような表現は心を打ちます。
うっすら微笑む優しげな老ピアニストのカットをあしらったジャケットから予感がしてましたが、このアルバムは来てます。
鍵盤を一つ一つ確かめるように、音をおいていくような演奏。1枚目の1960年の演奏は40歳の頃の演奏ということになりますが、既に枯れてます。この年齢でこの達観ぶりはどうなんでしょう。とくにピアニッシモの部分のつぶやくような表現は心を打ちます。
一方2007年の演奏の方は、録音の鮮明さもあり、鮮明な枯淡という趣。指がまわってないたどたどしさもあるものの、この人の一貫したスタイルをうまく伝えられています。47年もの間をおいた録音をセットにした企画意図も冴えてます。どちらかと言えば1枚目がおすすめです。
Leygraf氏はライナーノーツによれば2007年までザルツブルグのモーツァルテウムの教授だったとのこと。こうゆう人に教わると音符の意味までよくわかりそうな気がします。
他に同じレーベルからモーツァルトのソナタ5枚組とドビュッシーのアルバムも出ています。この人のモーツァルトも聴いてみたくなりましたネ。
Haydn Recordings Archive
Leygrafで検索してみてください(Piano Sonata 2, 3とも)