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ブリュッヘンのロンドンセット [スポットライト]

今日は巷で評判の高いブリュッヘンのロンドンセットを取り上げます。

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みなさんご存知のように、すでにフィリップスレーベルは存続せず、旧フィリップスの録音がDECCAレーベルで次々とリリースされている状況で、この盤もいまはHMV ONLINEでは入手できないようです。
オーディオに造詣が深いかたにはフィリップスレーベルとデッカレーベルは似て非なるもの。響きの美しいワンポイントに近い録音のフィリップスと比べ、デッカの方はマルチマイクによる定位感よりも個々の楽器をリアルに再現する音響で知られています。フィリップスの録音がデッカのラベルをつけて売られているのに何となくしっくりしないのは私だけでしょうか。

それはともかく、ブリュッヘンのハイドンは、古楽器によるハイドンの交響曲の代表的な存在とみなされています。
今回、コレクションの整理の一貫で、あらためてこのセットを聴き直してみました。
録音は86年から93年にかけてで、すべてライブ録音。ユトレヒト、ナイメーヘン、アムステルダム(コンセルトヘボウ)などでのコンサートを録音したものです(拍手なし)。

あらためて聴き直すと、曲によって出来に結構差があります。基本的にブリュッヘンの演奏は古楽器とは思えないエネルギー感あふれる分厚い響きを特徴としていますが、ともするとやや型にはまった印象が強い場合があり、演奏に生命感が宿るかどうかの分岐点になっています。以前聞いた話では、18世紀オーケストラはシーズンごとに招集される臨時オケで、基本的に1シーズン同じ曲の演奏旅行を行い、その途上で録音を行うとのこと。型にはまった印象とは、いつも同じ曲を弾きつづけることの弊害なんじゃないかと勝手に想像してます。

今回聴いて、非常に良かったのは、96番奇跡、99番、そして102番。ライブの緊張感とブリュッヘンの気迫が相俟ってすばらしい演奏になっています。これらの曲は、力が抜けた自然な盛り上がりに任せているところに良さがあるように聴こえます。この迫力はブリュッヘンと18世紀オーケストラの音響あってこそで、他の古楽器オケからこのようなデモーニッシュな迫力は聴くことは出来ません。

逆に良くなかったのは唯一アムステルダムコンセルトヘボウでの録音である101番時計。録音も期待ほどよくなく、肩に力が入って、アクセントが逆にくどい印象につながってしまってます。なかなか全曲むらのない演奏を録音するのはむずかしですね。

いまでこそ多くハイドンの交響曲には多くの古楽器の録音があるりますが、個性的という意味では、トーマス・ファイなどと存在を競うものといえるでしょう。ブリュッヘンも最近は録音が少なくなりましたが、スペインのグロッサなどからハイドンの新録音もどきどきリリースされるているようですので、更なる名演を期待したいものです。

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クイケンのロンドンセット [スポットライト]

昨日、クイケンのパリセットを取り上げましたが、気になって、ロンドンセットの方も聴き直してみました。

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これは、BMGジャパンの企画によるこれまでリリースされた5枚の録音を4枚にまとめた廉価盤で、まさに今年の3月に発売されたばかりのもの。もともとドイツハルモニアムンディ盤では、93番、94番、95盤と96番、97番、98番で1枚ずつ、のこりは2曲で1枚づつと計5枚のリリースでした。オーケストラはすべてラ・プティット・バンド。

録音は1992年から1995年にかけて、ヴァージン盤のラ・プティット・バンドのものと同様、オランダNaarlemです。
こちらの方が録音が新しい分響きの固さはなくなり、録音によるハンディはなくなりました。
演奏は、クイケン特有の端正さを保ちながら、編成が大きくなった分ダイナミックさも増しています。作為的なフレージングは一切なく、淡々と勧めていきますが、それでいて非常にニュアンスに富んでいて、高次元のバランスの良さを感じさせます。中では、96番奇跡、97番、98番、100番軍隊が気に入りました。他の曲もムラがなくいい仕上がりです。

リリース当初のジャケットものせておきましょう。
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各曲の評価はこちらでご覧ください。

パリセットなど

ロンドンセット

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クイケンのパリ交響曲集 [スポットライト]

今日はクイケンのパリ交響曲集を。

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これは現在入手可能なヴァージンでの録音集。26番、52盤、53番と82番から92番までの録音のセットもの。なぜか82番から87番の6曲のみオケがエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団で、のこりはクイケンお抱えのラ・プティット・バンド。
このオケの違いが今回のポイント。

ちなみに、パリセットの方の旧盤のジャケット写真がネットでみつかりましたので、のせておきましょう。

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こちらが、82、83、84番。

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こちらが84、85、86番の方。

同じヴァージンでの録音の他の曲とよく聴き比べてみると、このパリセットの2枚の出来が目立っていいんです。本来クイケンが組織したラ・プティット・バンドの方がいいのではとの憶測も働くんですが、そうではない。

両者とも古楽器での演奏とうたわれていますが、オケの奏でる音響の自然さが明らかに違います。ラ・プティット・バンドの方が明らかに弦が金属っぽい響きの癖が強い。それにつられてフレージングや響きの自然さ、ニュアンスの豊かさが違います。
パリセットはクイケンのハイドンの最上の録音なんじゃないかと思います。

もともとクイケンの指揮は、癖のない淡々とした枯淡の境地のような特徴があり、ある意味もう一歩の没入というか、踏み込みを求めてしまうところがありますが、このパリセットは、響きの自然な美しさすばらしく、またフレージンングも端正さの極みというレベルまで達しており、古楽器によるパリ交響曲集の代表的名盤といえるでしょう。

オケの違いと、もう一つは録音サイト。パリセットの方はアビーロードスタジオ。
アビーロードスタジオと言えばビートルズなんでしょうが、ウェブサイトに行ってみると巨大なオーケストラ用のスタジオもあります。スタジオ1というのがそれです。このウェブサイトの写真には音楽の生まれるプロの現場が見えてわくわくします。


パリセットの録音はオケの美しい響きが聴かれますが、このスタジオでの録音と音響処理によるものなんでしょう。ホールの空間そのもの音響のように巧く録られていますが、うちのオーディオセットでは、アムステルダムコンセルトヘボウのような極上の響きに聴こえます。
逆にその他はオランダ、アムステルダムそばのハールレムのDoopsgezinde Gemeentekerkというところの録音。ドイツハルモニアムンディのロンドンセットの録音場所もここであることからラ・プティット・バンドのいつもの録音場所ということでしょう。ヴァージンによるこちらの録音の方は、アビーロードスタジオと比べる響きが足りず、また堅さも感じられ、逆に少々響きに不自然さを感じてしまいます。
聴いている装置にもよるとおもいますが、こうした音質の違いも演奏の評価と切り離せませんね。

ロンドンセットの方はレーベルが異なりドイツハルモニアムンディでもあり、録音もパリセットよりも新しいものですので、だいぶ改善されていますから、要は録り方ということなんだと思います。こちらの方はまた別の機会に取り上げましょう。

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ノリントンの新旧交響曲集 [スポットライト]

最近ヘンスラーからリリースされたノリントンのロンドン交響曲集。

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悪魔博士のような風貌で、自由闊達に音楽を繰り出していくノリントン。
特に好きな指揮者なわけではないですが、ハイドン・イヤーにロンドン交響曲集をまとめてだされれば、手に入れない訳にはいきません。先日入手し、少しずつ聴いています。

2009年9月7日から12日の間のシュツットガルトでのライブ録音で、拍手も入っています。曲ごとのばらつきのない仕上がり。
基本的には、ノンビブラートの弦で、最近流行のベートーヴェンの演奏のような筋肉質な構成で、ちょっと癖のあるアクセント、レガートを効かせたノリントン独特の節回しに特徴がある演奏。
個人的には、もう少しあっけらかんとしたのりの良さがあるかと思ってたんですが、意外とはじけ切らない端正な面も。もしかしたら、録音が若干デッドなところがそうゆう印象につながっているのかもしれません。
ノリントンの良さがでているのはやはり太鼓連打。無音をつんざく太鼓の連打で始まる構成、終楽章の高揚感などなかなかのもの。

ノリントンは、90年代にEMIからロンドン交響曲集の後半99番以降の6曲を3枚に分けてリリースしていました。しばらく廃盤のままで市場から消えていましたが、今回のヘンスラーのリリースに当てるかのように2枚組にまとめ直して廉価盤で再リリースされました。HMVでは4月入荷予定です。

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今回の旧盤リリースは、やはり新盤の出来を見越してのことでしょう。今聴き直してみると、旧盤の方が私には遥かに良くきこえます。ニュアンスのデリケートさ、響きの美しさ、ふけ上がりの良さ、ノリントン独特の面白さも旧盤の方に分があるあるような気がします。

ノリントンは最近の不景気な状況においても、かなりの数の録音のリリースが続いており、ほとんどがライブ盤です。ノリントンの斬新な解釈はヨーロッパでは人気があるのではないかと思いますが、プロダクトとしての録音としては、昔のものの方が手間をかけて質の高いものをリリースしていたような気がします。

新盤には新盤の良さもあると思いますが、皆さんはどう感じられますでしょうか。

タグ:交響曲
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響き冴え渡る! エマニュエル・アックス [スポットライト]

今日はエマニュエル・アックスを取り上げましょう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/エマニュエル・アックス

今まで全く無警戒でした。
もろアメリカンなおじさん丸出しの風貌が災いしてなのか、雑誌やネットでもめったに取り上げられることがなく、ハイドンのソナタの録音も、ごく最近になるまで手を伸ばしていませんでした。

Wikipediaの記事によると、実はアメリカ人ではなくポーランド生まれとのこと。そして、やはりリリースされている録音も今は少なくなってしまっているようですので、露出も少ない訳です。ヨーヨーマなどとの録音によって知られているという面もあるかもしれません。

ハイドンのソナタ、協奏曲はそうしたアックスの現状からすると、重要なレパートリーと言えるかもしれません。
現在手に入るのは、協奏曲集1枚(3曲)、ソナタ集3枚(計13曲)の4枚。

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これらのアルバム、どれも文句なくすばらしいです。
ピアノの響きの美しさが冴え渡り、ハイドンの曲想を存分に楽しむことが出来ます。
ゆったりとした自然なテンポ。流れるようなタッチ。悟りきったかのような無欲なフレージング。そしてピアノの特に高音の響きの美しさ。まさにピアノによる理想的な演奏といえるんじゃないでしょうか。
私の好きなXVI:20(33番)の2楽章などこれ以上の演奏は望む必要がないほど。テクニックや欲を超えた音楽性を感じます。

アイドル系ピアニストがこれほどの演奏をしたなら、さぞかし人気がでることでしょうが、地味な存在であるアックスが、このような自然な、というより、個性が際立つ訳ではない演奏をしているということで、地味な存在になってしまているんだと思います。
しかし、わかる人には「わかる」と思います。この良さが。

皆さんは、どう感じられるでしょうか。

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リヒテルのソナタ録音 [スポットライト]

私がハイドンのピアノソナタの演奏で最も好きなピアニストはリヒテルです。

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リヒテルのハイドンのソナタの録音は、DECCAからリリースされている86年、87年のライブ録音のソナタ集2枚が現在も広く出回っています。その他にコンサートライブ盤がいろんなレーベルからぽつぽつ出でいましたが、現在は廃盤になっているものも多いようです。ライブ盤の構成を見ると、リヒテルはコンサートの冒頭でハイドンを一曲弾くというプログラムが多かったんじゃないかと思います。これらのライブ盤をあわせて、現在手元には12枚のリヒテルのハイドンの録音を納めたCDがあります。

リヒテルのハイドンの演奏の特徴は、これ以上ないほどの厳しい力感の表現だと思います。
ハイドンのソナタはモーツァルトと同様、曲の構成はベートーベン以降のソナタと比べるとシンプルですが、それだけに弾き手の能力をさらけだしてしまうようなところもあります。
オルベルツが古典の規律を表現し、ブレンデルがピアノの響きの変化の面白さにスポットライトを当て、アムランが冴えるテクニックを隠して抑制の美学を表現したハイドンのソナタを、すべての指先の力を緻密にコントロールして音符を響き渡らせ、吹き上がる頂点と無風の湖面の輝きのようなピアニッシモまで自在に変化させながら一気に弾ききった演奏です。どこにも隙も緩むところもなく、剣術の名士の居合いを見ているような厳しさがあり、私はリヒテルの演奏からヨーロッパの伝統というよりは、不思議と和の心境に近い響きを感じます。

DECCA盤の以外のライブ盤もほとんどムラのない秀逸な演奏ばかりです。XVI:29(94年)、XVI:20(92年)なんかは絶品。間違いなくハイドンのソナタ演奏の頂点の一つだと思います。

それぞれの録音の詳細と評価は、右のリストのPiano Sonata 1から3までで”Richter”で検索してみてください。

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カラヤンのハイドン再考 [スポットライト]

カラヤンのハイドンは昔から入門盤として日本では巷の評価は高いもの。

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私自身はカラヤンは嫌いな方ではありませんが、ハイドンに限らず、一般的に1950年代、60年代のものはいいと思うものがある一方、70年代以降のアルバムについて積極的に押す気になるものはあまり多くありません。カラヤンの魅力は壮年期の覇気にあふれる演奏というのが音楽好きの見方なんじゃないでしょうか。

ハイドンの交響曲については80年代にベルリンフィルを振ったロンドンセットやパリセット(独グラモフォン)や、その少し前のEMIの交響曲集、そしてウィーンフィルとのロンドンなど数曲が知られています。

今回整理の都合で、あらためてちょこちょこ聴き直してみました。
上に紹介したアルバムは、ハイドンをいろんな演奏で聞き込んできた立場でいうと、非常に個性的な、特殊な演奏というのが正直なところ。重厚長大な曲想、うなる低音弦、意外と強弱の幅は大きくなくレガートを多用した、まさに磨き抜かれたカラヤン風という趣。
演奏の根底にあるのはハイドンの曲想をどう表現しようかということではなく、ハイドンの楽譜をどうカラヤン風の音響で表現しようかということでしょう。

最近、ホグウッドやアダム・フィッシャーのロンドンの実演を聴いて、ハイドンの曲に対する私の見方も少し変わりました。
ハイドンの曲には、仕えてきたエステルハージ家の人々に音楽の喜びをどう伝えようとか、評価してくれるロンドンの聴衆へ最高の作品を届けるために、持てるアイデアをふんだんに練り込んだり、創意の限りを尽くすといったメッセージが込められています。
それゆえ、演奏ではそのメッセージがどれだけ感じられるかがポイントとなるわけです。

先のカラヤンの演奏からは残念ながらハイドンのそういった魅力が感じられないというのが正直なところでしょう。最近はカラヤンよりも、フィッシャーとハイドンフィルのような素朴な演奏の方がハイドンのこうした魅力がより伝わってくるように感じます。

ということで、ハイドンの交響曲の入門というセレクトをするなら、カラヤン盤はおすすめしません。
カラヤン盤は、ハイドンをよく聞き込んだマニアに、「こんな演奏もあるのだ」とうなっていただくべきアルバムであります。


と、これではカラヤンにスポットライトを当てたことにならないので、カラヤンのハイドンのおすすめ盤を紹介しておきます。
こちらは、入門者にもマニアにも広くすすめられる名盤です。天地創造の旧盤。カラヤンのハイドンの中ではお気に入りの一枚です。


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